株式の相続税について知っておきたいコツ

[toc]

相続税とは、個人が死亡した際に、その人の遺した財産(株式を含む)に対して課される税金です。税率は主に遺産の総額に基づいて決定されます。

株式の相続には、その株式がどの種類かによって違いがあります。上場している株式は、株式市場での価格で評価されます。

一方、上場していない株式の評価はもっと複雑で、その会社の純資産や同じ業界の他の会社と比べてどうか?といった方法で価値を決めます。

上場株式の相続税対策

上場株式の相続税対策については、以下のような項目に分けて考える事が出来ます。

1. 評価額の把握と対策
相続時の株式の評価額を正確に把握します。
評価額が高い場合は、事前に株式を分散または売却して相続税の負担を軽減します。

2. 配当再投資
配当を再投資し、資産の増加を図ります。
配当金は通常、税率が低いため、再投資する事で税効率が良なる場合があります。

3. 小規模企業共済等の利用
小規模企業共済等に加入し、相続税対策資金を準備します。
これらの制度は、相続税の支払いに充てる事が出来る特例があります。

4. 生命保険の利用
生命保険を活用して相続税の支払い資金を準備します。
保険金は相続税の課税対象外となる場合が多く、よく利用されます。

5. 事業承継の計画
事業承継計画を立て、株式の承継をスムーズに行います。
承継計画には、家族信託や株式の事前移転などが含まれます。

6. 相続時精算課税制度の活用
相続時精算課税制度を利用して、相続税の負担を繰り延し出来ます。ただしこの制度は、特定の条件を満たす必要があります。

これらの相続税対策は、個人の資産や相続の具体的な状況に応じて適した方法が違います。複雑なケースでは、専門家に相談するのが最善と言えます。

非上場株式の相続税対策

1. 評価の把握と対策
非上場株式は上場株式と異なり、市場価格が存在しないため、評価が難しいです。税務当局の評価方法に基づいて、事前に評価額を把握し、適切な対策を講じる事が重要です。

2. 株式の事前贈与
相続発生前に株式を家族などに贈与することで、相続時の税負担を減らす事が出来ます。贈与税の非課税枠を活用しながら、計画的に実行する事がポイントです。

3. 家族信託の活用
家族信託とは、家族内で財産や株式を管理・継承する便利な方法です。家族信託を利用して、株式の管理と承継を行う方法です。これにより、事業の継続性を保ちつつ、相続税の負担を軽減する事が可能です。

4. 相続時精算課税の選択
相続時精算課税制度を利用する事で、相続税の支払いを繰り延べる事が出来ます。特に、事業承継を考慮している場合に有効な方法です。

5. 小規模企業共済等の利用
小規模企業共済等に加入して、相続税の資金準備を行います。この制度は、相続発生時に必要な資金を効率的に準備出来るメリットがあります。

6. 事業承継計画の立案
事業の継続性を考慮した事業承継計画を立案します。株式の承継だけでなく、経営理念の継承や後継者育成も含めた包括的な計画が必要です。

相続税の税率

日々価格変動する上場株式や個人が持つ非上場株式は、相続時の評価額が予想以上に高額になってしまう可能性があり、相続税の不安が常に伴います。

相続税の税率(2022年10月時点)

取得金額    相続税率
1,000万円以下  10%
3,000万円以下  15%
5,000万円以下  20%
1億円以下  30%
2億円以下  40%
3億円以下  45%
6億円以下  50%
6億円以上  55%

いざ相続時になって相続人の間で株式をどう分けるか問題に発展する事が多々あります。しかし、例えば生前贈与を活用すればこういった不安を軽減するケースもあります。
株式の譲渡には、株式を譲る相手に生前贈与する方法と、所有者が死亡してから譲り受ける相続税とがあります。

生前贈与
株式を生前に譲り受ける方法であり、この場合、譲り受けた相手が贈与税を払う可能性があります。

贈与税
贈与税は、個人が他人から贈与を受けた場合に課される税金です。譲り受けた贈与価格から一定の控除額を差し引いた金額に対して課税されます。

非課税枠基礎控除
一般に、1年間に受け取った贈与の総額が110万円以下であれば、贈与税は発生しません。これを基礎控除と言います。

特定贈与の非課税
教育資金や結婚・出産資金など、特定の目的のための贈与には、条件を満たすと非課税枠が適用される事があります。

累進税率贈与税

累進税率贈与税は累進課税制度を採用しています。これは、贈与の金額が多くなるほど、高い税率が適用されるというものです。以下は一般的な累進税率の例です(2023年時点)

贈与の金額  税率
200万円まで  10%
300万円まで  15%
400万円まで  20%
600万円まで  30%
1,000万円まで 40%
1,500万円まで 45%
3,000万円まで 50%
3,000万円超  55%

税率は贈与額が増えるごとに段階的に上昇し、各区分の最低額を超えた部分にのみ新しい税率が適用されます。

贈与の計算方法具体的な計算では、まず1年間に受けた贈与の総額から基礎控除の110万円を差し引きます。その差額に対して上記の累進税率が適用され、税額が算出されます。

現金だけでなく、不動産や株式なども贈与の対象となります。家族間でも贈与税が適用されるため、親から子への大きな金銭の贈与なども税金の対象になり得ます。

贈与税は、現金、不動産、株式などを含む贈与に適用され、家族間の贈与にも当てはまります。贈与を受けた人は税務申告が必要で、贈与の額によって税率が異なります。株式は価格が低く分割しやすいので、段階的な贈与によって贈与税を節約するのに適しています。

生前贈与した場合、受贈者に対して贈与税が課税されます。贈与には暦年贈与(暦年課税制度)と相続時精算課税制度の2つの制度があります。

 

暦年贈与(歴前課税制度) 相続時精算課税制度
贈与時

非課税枠

基礎控除

各年110万円

基礎控除 各年110万円

特別控除 累計2,500万円

(複数年にわたることも可)

贈与時

税率

累進税率で計算

(基礎控除超過部分に10〜55%)

累計2,500万円超過部分に付き

一律20%

相続時

の留意点

相続開始前3年以内の贈与財産

(贈与時の時価)のみ相続財産に加算

贈与財産を贈与時の時価※で相続財産に加算

既に納付済の贈与税額を差し引いて相続税の納付額を算出

※1度選択したら撤回は出来ないので慎重な判断が必要

相続時精算課税制度は自動継続・取消不可

将来値上がりする事が期待される株式などの資産については、早期に贈与しておくことが節税につながります。

相続時精算課税制度の一番怖いポイントは、一度この制度を選択すると、一生涯この制度が継続される点(自動継続・取消不可)にあります。

暦年課税か相続時精算か

18歳以上の人が60歳以上の父母・祖父母から贈与を受ける際にどちらの制度を使うかは、受贈者が選択出来ます(選択がなければ暦年贈与が適用出来ます)。

暦年課税制度と、相続時精算課税制度についてどちらを選択するほうが良いかは個別の事情によって変わります。

暦年課税制度に適している人

子供や孫などの多くの贈与対象者がいる人
贈与税の非課税枠は受贈者ごとに適用され、多くの受贈者がいれば1年間で贈与できる総額が増加します。相続財産を受け取らない孫に対する7年以内の贈与は生前贈与加算の対象外となり、相続税の軽減が可能です。

60歳未満の人
相続時精算課税制度は60歳以上の親や祖父母からの贈与に適用されます。60歳未満では暦年課税制度を利用する必要がありますが、60歳になると相続時精算課税制度に切り替えることが可能です。

60歳以上でまだ健康、期間7年より時間がある人
元気なうちから贈与を開始する事で、相続開始前7年を経過した贈与は生前贈与加算の対象外になり相続税を軽減出来ます。

相続時精算課税制度に適している人

健康状態を考慮した高齢者
長期にわたる贈与計画の実行が難しい場合、いずれ訪れる相続のタイミングに備え、年間110万円以下の贈与であれば相続財産に含まれない相続時精算課税制度の活用が適切です。

年110万円以下でしか贈与しない人
年110万円以下でしか贈与をする予定がない場合、生前贈与加算をする必要がない相続時精算課税制度を活用する方が良いでしょう。

将来値上がりしそうな不動産や株を持っている人
相続時精算課税制度による贈与を相続財産に加算する場合は贈与時の評価額で加算するため、値上がりする前に贈与する事で相続税を軽く出来ます。

特殊事情で一時的に下落した資産を持っている人 
一時的に価値が下落している資産を持っている場合、そのタイミングで贈与する事により、下落時の評価額で相続税を計算出来ます。

どちらが適切な選択かは、個別の事情によって変わります。わからない場合は専門家に相談するのが適切です。

暦年贈与

暦年贈与を活用する場合、1年ごとに多くの人に贈与を行う事で、1年当たりの相続税軽減効果が高くなります。

例えば5人に110万円ずつ贈与すれば、年間550万円の財産を非課税で移転する事が出来ます。

相続税の税率は資産内容や家族構成により変わってきますが、例えば将来の相続税率が40%と想定される人だと、

1年当たり220万円(=550万円×40%)

の相続税の軽減になります。

複数年かけて贈与を行う事で、効果はさらに大きくなります。ただし、贈与者が高齢である時など、対策にあまり時間をかけられない場合には、贈与税を支払ってでも各年の贈与額を増やし、1年当たりの相続税軽減効果を大きくする事も出来ます。

将来の相続税率が40%と想定される場合、下の表のとおり、1500万円を贈与する事で最も大きな軽減効果を得る事が出来ます。

贈与金額 贈与税額(A)

(贈与税率)

将来の相続税軽減額(B)(相続税率40%) 差引

相続税軽減効果

(B)-(A)

110万 0円 44万円 44万円
300万 19万円(10%) 120万円 101万円
500万 48.5万円(15%) 200万円 151.5万円
1,000万 117万円(30%) 400万円 223万円
1,500万 366万円(40%) 600万円 234万円
2,000万 585.5万円(45%) 800万円 214.5万円

「特例贈与」を前提に計算しています。

 

 

 

相続時精算課税制度

日本の税法において、贈与税と相続税の両方に関わる制度です。適用条件としてこの制度は60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子への贈与に適され、特に上場株式や非上場株式の贈与に対して有効です。

税の先送り
贈与時に贈与税を払わず、親が亡くなった時に相続税として清算します。メリットとして一定額までの贈与は非課税(年間110万円までの基礎控除あり)になります。

税制を通じて資産の移転を促進し、中小企業の承継問題などに対応出来ます。この制度は、贈与と相続の間の税務計画を戦略的に行うために用いられています。

株式を譲渡して相続税を払う

株式を譲渡して相続税を支払う際は、幾つかの注意点があります。

1. 譲渡価格の適正性を確認する
相続税は、相続時の市場価値に基づいて計算されるので株式の譲渡価格が適正である事を確認します。税務当局は、過剰な評価や不当な取引を検知するため、譲渡価格に注目するからです。

2. 譲渡前に贈与とみなされないよう確認する
株式を譲渡する際には、その取引が贈与として扱われないように注意しましょう。贈与とみなされる場合、別途贈与税が課される可能性があります。税務アドバイザーや専門家の助言を求める事をお勧めします。

3. 相続税申告書を正確に作成する
相続税の申告書は正確に作成する必要があります。株式の評価や譲渡時の条件など、必要な情報を適切に記載しましょう。漏れや誤りがあると、追加の調査や税務罰金のリスクが生じます。

4. 必要な書類を提出する
相続税の申告には、適切な書類が必要です。株式の所有権証明書や譲渡契約書、評価書などの書類を準備し、税務当局に提出しましょう。正確で完全な書類があれば、申告プロセスが簡単に進みます。

相続税には申告期限がある

相続税の申告期限は、相続開始日より10ヶ月以内となります。
相続発生後は、被相続人の財産・債務の把握、相続人の確認等様々な作業を行う必要があります。

その財産・債務を把握したうえで相続放棄を選択する場合は、相続開始日から3ヶ月以内に申出なくてはなりません。また、被相続人の準確定申告(その年の1月1日~相続発生日までの確定申告)は、相続開始日から4ヶ月以内に行わなくてはなりません。

期限に間に合うように手続きを行いましょう。期限を守らない場合、遅延罰金などが課される可能性があります。よって、相続税の申告の相談は早いほど良いでしょう。出来れば相続開始日から2ヶ月以内にされる事をお勧め致します。

相続税申告書の作成
まず相続税申告書を作成し、相続税の評価額や減免申請などの情報を記入します。相続税申告書は国税庁のウェブサイトからダウンロードするか、税務署で入手出来ます。

納税通知書の到着
相続税申告書の提出後、国税庁から納税額が計算された納税通知書が送られてきます。指定された期限までに納税しましょう。

納付先の選択
相続税は、納付先を自分で選択する事が出来ます。一括納付や分割納付、銀行振込など、選択肢が幾つかありますので、納付方法については税務署や専門家に相談し、最適な方法を選んで下さい。

これらの注意点を念頭に置く事で、株式の譲渡と相続税の処理を円滑に進められます。より安全策を取るなら税務の専門家やアドバイザーに相談するのが賢明です。選んだ納付方法に従って、相続税を賢く納付しましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次