株式相続放棄の手続きについて、ステップバイステップで解説する完全ガイド

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相続放棄とは、故人から財産を相続したくない場合に行う手続きです。特に、借金や負債を相続するリスクを避けたい場合に有効です。株式も相続財産の一部となるため、相続放棄の対象になり得ます。以下、6つのステップで説明していきます。
ステップ1:相続の開始を確認する
相続は、故人が亡くなった瞬間に自動的に開始します。法律上、この時点で故人の財産や権利、義務は相続人に移転する可能性があります。しかし、実際には相続人がこれらを承継するためには、一定の手続きが必要になります。
死亡証明書の入手が必要になります。死亡証明書は、相続手続きを始める上で最も基本となる公的な文書です。この証明書には、故人の死亡日時や死亡場所など、相続開始の根拠となる情報が記載されています。死亡証明書は、故人が亡くなった病院や、場合によっては市町村役場などの地方自治体から発行されます。故人が亡くなったことを証明するためには、これらの機関に申請して死亡証明書を入手する必要があります。
ステップ2:相続財産の調査
故人の財産と負債の全体像を把握することで、相続する価値があるか、あるいは相続放棄を検討するべきかの判断が可能になります。また、相続放棄には期限が設けられているため、迅速かつ正確な財産の調査が求められます。
相続財産の調査方法は次のようになります。
1.財産のリストアップ
故人名義の不動産、預金、株式、その他の有価証券、車両、貴金属、アート作品など、あらゆる財産をリストアップします。
2.借金と負債の確認
故人が残した借金や負債も同様にリストアップします。これには住宅ローン、個人ローン、クレジットカードの債務、未払いの税金などが含まれます。
3.公的記録の確認
不動産登記簿や会社登記簿など、公的な記録を確認して財産の詳細を把握します。
4.金融機関への問い合わせ
故人名義の銀行口座や投資口座について、金融機関に問い合わせを行い、資産の詳細を確認します。
5.遺言書の確認
故人が遺言書を残している場合は、その内容に基づいて財産の分配や指示がなされているかを確認します。
特に大規模な財産や多額の借金が関わる場合、全ての情報を集めるのに時間がかかることがあります。余裕をもって対応しましょう。複雑な相続財産の調査には、弁護士や税理士などの専門家の支援を受けることが有効です。
ステップ3:相談•個別状況の理解
相続は個人の状況によって大きく異なります。専門家は、個々のケースに合わせたアドバイスを提供することができます。
法律的複雑性の解消
相続法は複雑であり、非専門家には理解しにくい場合が多いです。法律の専門家や税理士は、この複雑性を解きほぐし、適切な選択肢を提示するのに役立ちます。
税務上の影響の把握
相続放棄には税務上の影響も伴います。税理士は、相続放棄による税金の負担や節税のチャンスを詳細に説明することができます。
相談すべき専門家
◎弁護士
特に相続法を専門とする弁護士は、相続放棄の手続きや必要な書類、法的影響について詳細なアドバイスを提供します。
◎税理士
税理士は、相続放棄が税務上どのような影響を及ぼすか、また、相続税の申告に関するアドバイスを行います。
相談前には、故人の財産と負債に関する情報を整理しておくことが重要です。これには、不動産、株式、借金、その他の負債のリストや評価額が含まれます。自分の状況に最も適したアドバイスを得るために、具体的な質問を準備しておくことが有効です。また一人の専門家だけでなく、複数の専門家に意見を求めることで、よりバランスの取れた判断が可能になります。
ステップ4:相続放棄の申立て
相続放棄を希望する場合、故人の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをする必要があります。この期限を過ぎると、相続放棄をすることができなくなり、法律上、相続人は故人の財産だけでなく負債も引き継ぐことになります。
必要な書類
1.死亡証明書 故人の死亡を証明する公的書類です。この書類は、相続の開始を証明し、相続放棄の申立てに必要な基本的な書類です。
2.相続人の身分を証明する書類 これには、戸籍謄本や住民票などが含まれます。相続人が申立人であることを証明するために必要です。
3.放棄の申立書 相続放棄をする意志を表明する書類で、家庭裁判所に提出します。申立書には、申立人の情報、故人の情報、相続放棄の意志を明確に記載する必要があります。
申立て手続きの流れ
1.書類の準備 上記で挙げた書類を用意します。場合によっては、裁判所から指定されたフォームを使用することもあります。
2.家庭裁判所への提出 必要な書類を揃えた後、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にこれらを提出します。
3.手数料の支払い 申立てには手数料がかかる場合があります。裁判所によって金額は異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
4.申立ての受理 書類が受理されると、裁判所は相続放棄の手続きを正式に開始します。
ステップ5:申立ての手続き家庭裁判所での手続き
家庭裁判所に提出された相続放棄の申立ては、裁判所によって審査されます。この審査では、提出された書類が適切であり、法律に基づいて相続放棄が可能であるかが確認されます。
審査を通過し、申立てが問題ないと判断された場合、相続放棄の申立ては受理されます。受理されると、申立人は正式に相続放棄を行ったことになります。
相続放棄の申立てが受理されると、申立人に対する相続財産に関する一切の権利と義務が消滅します。これは、申立人が故人の財産だけでなく、負債からも解放されることを意味します。
一人の相続人が相続を放棄した場合、その放棄された財産は他の相続人によって分割されます。放棄が影響を及ぼす具体的な分割方法は、相続人の数や相続財産の性質によって異なります。
相続放棄の申立ては、故人の死亡を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、相続放棄をする権利を失う可能性があります。
ステップ6:確認と記録相続放棄受理の確認
家庭裁判所から相続放棄の申立てが受理されたことを証明する書類を入手します。この書類は、今後の法的手続きや、銀行やその他の機関で相続放棄を証明する際に必要になる可能性があります。
受理証明書には、申立人の名前、故人の情報、相続放棄が受理された日付などの詳細が記載されています。これらの情報が正確であることを確認してください。書類の保管
相続放棄に関連するすべての書類、特に家庭裁判所から発行された受理証明書は、紛失や破損のリスクから守るために、安全な場所に保管する必要があります。
書類の安全性をさらに高めるために、デジタルコピーを作成し、クラウドサービスや外部ドライブに保存しておくことをお勧めします。これにより、原本が失われた場合でも情報を復元できます。
将来の参照のための準備
相続放棄に関連する書類を整理し、容易にアクセスできるようにしておくことが重要です。将来的にこの情報が必要になった際に、すぐに対応できるようにします。
相続放棄を行った場合、その事実を家族や他の相続人に通知し、必要に応じて関連書類のコピーを提供することも考えられます。注意点•相続放棄は全財産に対して一括で行われ、個別の財産(例えば、株式のみ)を放棄することはできません。
相続放棄の申立て後に撤回することは原則としてできませんので、決定前に十分な検討が必要です。まとめ株式相続放棄の手続きは、法的なプロセスを要するため、専門家の助言を受けることが重要です。手続きを適切に進めることで、不要な負債の負担を避け、相続人の財産保護につながります。
合わせて覚えておきたい事
◎譲渡制限付株式とは?
会社が望まない人が株主になるのを防ぐために、売買に一定の制限をかけた株式です。この制限により、株式を売り買いする際には会社の事前承認が必要になります。そのため、相続でこの種の株式を受け取った人は、自由にその株式を売ることができません。もし会社が他の人への売却を認めない場合、株式を会社に買い取ってもらうことが可能です。また、もし望まない人が相続によって譲渡制限付株式を手に入れた場合、会社はその株式を相続人から買い取るよう要求する権利があります。ただし、相続自体は「譲渡」とはみなされないため、相続による株式の移転は譲渡制限の適用外であり、会社の承認なしに株式を相続することが可能です。
◎株式売却時の税金について
株式を売る時は所得税と住民税がかかる株式を誰かから受け継いだら、まず相続税の支払いが必要です。そして、その株式を売って利益を得た場合、その利益に対しても所得税と住民税が発生します。つまり、相続した財産を現金化する際には、相続税だけでなく、利益に対する税金も考慮に入れる必要がありますので、相続税、所得税、住民税を念頭に置いておくことが大切です。
株式と相続放棄についてよくある質問と回答
Q.相続放棄した財産は誰の所有になるのですか?
A.、故人の財産に対して一切の権利を有しないことになります。そして相続放棄した財産は次に権利を有する相続人に移ります。もし他に相続人がいない場合、または全ての相続人が相続を放棄した場合、その財産は国に帰属することになります(これを「国庫帰属」と言います)。相続放棄によって、故人が経営していた会社などの財産も同様に扱われます。もし相続人全員が相続を放棄した場合、会社の解散や清算の手続きは通常、国が指名した管理人や清算人によって行われることになります。しかし、実際の手続きは国や地域の法律によって異なるため、具体的な手続きを行う際には法律の専門家の助言を得ることが重要です。
Q.株式含め全財産を相続放棄したら、亡くなった人が経営していた会社等をたたむときに、手続きは誰が行えばよいですか?
A.放棄した財産に関しては、相続人(放棄を行った人)には一切の権利や義務が発生しません。故人の財産に関して、法律上、最初から相続人ではなかったと扱われます。故人が経営していた会社をたたむ(解散と清算)手続きは、相続放棄によって相続人の責任から解放された後、直接的には相続人の責任ではなくなります。相続放棄をすると、その財産は法定相続人の次に当たる人に相続の機会が移ります。もし、全ての相続人が相続放棄をした場合、財産は国に帰属することになります(無主財産の取扱い)。そのため、故人が経営していた会社の解散と清算に関しては、以下のような場合があります。
1.他の相続人が手続きを行う:全ての相続人が放棄していない場合、相続を受け入れた人が会社の解散手続きを進める責任を負います。
2.国が手続きを行う:全相続人が放棄し、財産が国に帰属した場合、国が適切な手続きを講じることになりますが、実際にはこのような場合は比較的稀です。
3.会社の他の株主や取締役が手続きを行う:故人が唯一の株主でない場合、または会社法に基づく手続きに従って、会社の他の株主や取締役が解散手続きを行うことがあります。実際の手続きは、会社の形態や状況、相続放棄の具体的な状況によって異なるため、法律の専門家に相談することが重要です。
Q株式を含めた相続放棄についてのデメリットは?
A.デメリットは個々の状況や相続する財産の性質によって異なる場合があります。
相続放棄をすると、株式を含むすべての財産権を放棄することになります。将来価値が上昇する可能性のある株式や他の財産を失うことになり、長期的に見て財政的な損失につながる場合があります。
多くの法域では、相続放棄は全ての財産に対して一括で行う必要があり、個別の財産(例えば、負債は放棄して株式だけを受け取る)を選択することはできません。これにより、有利な財産も不利な財産も一緒に放棄することになり、結果的に利益となるべき財産を失うことになります。
故人の負債が相続財産よりも多い場合、相続放棄が合理的な選択肢となることがあります。しかし、相続放棄によって自動的に故人の負債が消滅するわけではなく、債権者は故人の遺産に対して引き続き請求を行うことができます。相続放棄後に残された財産がない場合、債権者は損失を被ることになります。
相続放棄をするためには、裁判所に申請するなど、特定の法的手続きを踏む必要があります。このプロセスは時間がかかり、場合によっては法律家への相談が必要になるなど、手間と費用がかかることがあります。
相続放棄は家族間で争いの原因となることがあります。特に、財産の価値が大きい場合や、放棄によって財産が国に帰属することになる場合には、家族間の関係が悪化する可能性があります。