親が残した株式を相続する ~親が亡くなった後の名義変更⼿続きと税の完全ガイド

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株式を所有していた親が亡くなった後、残された者は相続手続きを始めなくてはなりません。今回は、亡くなった親の株をもらうにはどのような手続きが必要になるのか、ポイントを説明します。

 

 

遺産分割協議

相続⼿続きの初歩として、死亡証明書の取得後、遺産分割協議を⾏います。この協議では、相続⼈が故⼈の遺産をどのように分割するか決定します。時として、弁護⼠や公証⼈などの第三者の介⼊が必要となり、相続⼈全員の合意が求められます。この過程を基に、株式の名義変更⼿続きが進⾏します。証券会社への⼿続きには、遺産分割協議書、死亡証明書、及び相続⼈の⾝分証明書が必要となります。

ステップ1: 死亡証明書の取得
死亡証明書は、医師による死亡診断書を基に、故⼈の基本情報と提出者情報を記載した死亡届を市区町村役場に提出することで発⾏されます。この⼿続きは、故⼈が亡くなった場所の役場で⾏われます。

ステップ2: 遺⾔書の有無の確認
相続⼿続きでは、遺⾔書の内容が優先されます。公証⼈役場で遺⾔書の登録の有無を確認し、存在する場合はその指⽰に従います。

ステップ3: 必要書類の準備
死亡証明書:⼿続きの基礎となる書類。
遺⾔書のコピー: 遺⾔の存在が確認された場合、その内容を証明するために必要です。
相続⼈全員の同意書: 相続⼈が複数いる場合、名義変更の⼿続きに全員の合意が必要です。
相続⼈の⾝分証明書: 相続⼈であることを証明します。
相続関係を証明する書類: ⼾籍謄本など、相続関係を明確にします。
株式名義変更申請書: ⾦融機関ごとに準備されています。

ステップ4: 相続税の基礎知識
相続税は、故⼈の総資産と法定相続⼈の数に基づいて計算されます。申告と納税は、相続発⽣後10ヶ⽉以内に必要です。

ステップ5: ⾦融機関への連絡
故⼈が保有していた⾦融機関に連絡し、名義変更⼿続きを⾏います。⼿数料が
発⽣する場合があります。⾦融機関によって⼿続きの詳細が異なるため、事前に確認が必要です。

ステップ6: 名義変更の完了
提出された書類が⾦融機関に受理された後、株式の名義変更が完了します。名義変更完了の証明は、将来的な参照のために保管しておくことが重要です。

遺⾔書がない場合の親の株の相続⽅法

親が亡くなると悲しむ暇もないほど忙殺されますが、財産の問題は容赦なく追いかけてきます。遺言書があれば、それにしたがって遺産を分けますが、ない場合には相続人の協議で分割していくことになります。

法定相続⼈の決定
遺⾔書がない場合は、法定相続分に従って相続が進みます。故⼈の配偶者、⼦ども、親、兄弟姉妹などが法定相続⼈として、法律に定められた順序で相続権を有します。相続分は、通常、法律で定められた割合に基づいて計算されます。合意に⾄らない場合は家庭裁判所に調停や裁判を申し⽴てることが可能です。株式の名義変更は、協議完了後に⾏われます。

相続分の計算
法定相続⼈が決定された後、各相続⼈の相続分を計算します。相続分は、通常、法律で定められた割合に基づいています。たとえば、故⼈に配偶者と⼦供がいる場合、財産はこれらの相続⼈間で特定の割合で分割されます。相続分の計算は複雑になることがあり、場合によっては法的な助⾔が必要になることもあります。

必要書類
遺⾔書がない場合の株式相続には、以下のような書類が⼀般的に必要です。

故⼈の死亡証明書
法定相続⼈を証明する書類(⼾籍謄本など)
株式名義変更申請書
相続⼈全員の同意書(相続⼈が複数いる場合)
相続⼈の⾝分証明書

これらの書類は、株式の名義変更を⾦融機関に申請する際に必要となります。書類の種類や詳細は、⾦融機関や国によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。

株式の名義変更プロセス
必要書類を準備した後、故⼈が株式を保有していた⾦融機関に連絡し、名義変更の⼿続きを開始します。このプロセスには、⼿数料が発⽣することがあります。⾦融機関は提出された書類を確認し、⼿続きが完了次第、株式の名義変更を⾏います。

親の死後に株式を名義変更する際の税⾦対策

相続では、株式を含む財産に対して相続税が課せられます。節税対策には、
1.【⽣前贈与】
2.【⼩規模企業共済への加⼊】
3.【家族信託の活⽤】などがあります。
これらの戦略を適切に利⽤することで、相続税の負担を軽減できます。相続税の申告と納税は、相続発⽣後10ヶ⽉以内に完了させる必要があります。
以下に相続税の計算⽅法、株式の評価⽅法、節税対策について解説します。

相続税の計算⽅法
相続税は、故⼈から相続または遺贈によって受け取った財産の価値に基づいて計算されます。計算⽅法は国や地域によって異なりますが、⼀般的には全ての相続財産の市場価値を合計し、そこから法定の控除額(基礎控除額、特定の控除など)を差し引いた⾦額に対して税率が適⽤されます。

株式の評価⽅法
株式の相続においては、評価⽅法が特に重要です。株式は評価⽇における市場価値で評価されることが⼀般的です。⾮上場株式の場合、評価はより複雑になり、業績や資産状況などを考慮した独⾃の評価基準が適⽤されることがあります。

節税対策

相続税の負担を軽減するためには、いくつかの節税対策が考えられます。主な⽅法として、⽣前贈与、⼩規模企業共済等への加⼊、家族信託の活⽤が挙げられます。

1. ⽣前贈与
■年間贈与税の⾮課税枠
⽇本では、贈与者⼀⼈あたり受贈者⼀⼈への年間贈与額が110万円までなら、贈与税が発⽣しません。この枠内で贈与することで、相続財産を事前に減少させることができます。
直系尊属からの教育資⾦等の特例
直系尊属から⼦や孫への教育資⾦や結婚資⾦には、特定の条件下で⾮課税の特例が適⽤されます。
効果的な⽣前贈与の戦略として、⼩規模ながら継続的な贈与、教育資⾦や結婚資⾦の贈与、⽣命保険の活⽤、不動産の贈与と適切な評価があります。これらの⽅法を適切に組み合わせることで、相続税の負担を⼤幅に軽減することが可能です。
教育資⾦や結婚資⾦の贈与
教育資⾦や結婚資⾦の贈与は、特定の条件を満たせば贈与税が⾮課税となるため、この特例を利⽤することも⼀つの⽅法です。対象者の年齢や贈与の⽬的、⾦額の上限に注意しながら計画を⽴てましょう。

■⽣命保険の活⽤
受取⼈を⼦どもや孫に指定した⽣命保険に加⼊し、保険⾦を贈与として利⽤する⽅法もあります。この場合、保険⾦の受取が相続財産とは別に扱われるため、相続税の基礎となる財産の額を減らすことが可能です。

■不動産の贈与と評価
不動産を贈与する場合、その評価額が市場価格よりも低く設定されることがあります。適切な評価を⾏い、贈与による税負担を最⼩限に抑えるためには、不動産の贈与に関する専⾨家の助⾔を求めることが重要です。

■注意点:⽣前贈与の実施にあたって
⽣前贈与を進める際には、贈与税のみならず、受贈者に及ぼす所得税や住⺠税の影響も慎重に検討する必要があります。贈与が家族間の財産バランスに変化をもたらす可能性があるため、全ての家族メンバーが⼀堂に会して、共通の理解と合意に基づく計画を策定することが重要です。適切な計画の策定と実⾏のため、専⾨家のアドバイスを受けながら、最も適した贈与計画を⽴てることを推奨します。

2. ⼩規模企業共済等への加⼊
中⼩企業の経営者や個⼈事業主にとって、⼩規模企業共済への加⼊は、退職⾦の準備と相続税負担の軽減の両⽅を⽬指せる有効な⼿段です。積⽴⾦は特定の条件下で相続税の課税対象外となり、死亡時の遺族給付⾦には⾮課税枠が設けられています。

■⼩規模企業共済とは
中⼩企業者や個⼈事業主が⾃らの退職⾦を⾃助努⼒によって準備するための制度。この共済制度に加⼊することで、事業者は定期的に共済⾦を積み⽴てることができ、退職時や事業の譲渡時には積⽴⾦と利息を含めた⾦額を受け取ることが可能です。また、事業者が死亡した場合には、遺族が受け取れる給付⾦としても機能します。

■節税のしくみ
‧積⽴⾦の⾮課税
⼩規模企業共済への積⽴⾦は、⼀定の条件のもとで相続税の課税対象から除外されるため、相続税の負担を軽減できます。

‧遺族給付⾦の特例
事業者が死亡した場合に遺族が受け取る給付⾦は、相続税法上、⼀定の⾮課税枠が設けられています。このため⼤きな給付⾦を遺族が受け取っても、相続税の負担が軽減される可能性があります。

■加⼊のメリット
‧財務計画の安定性
⼩規模企業共済への加⼊は、経営者⾃⾝やその遺族の将来の経済的安定を⽀える役割を果たします。また、退職⾦の準備としての機能も兼ね備えているため、事業の後継者問題といった将来のリスク管理にも寄与します。
‧税制上の優遇措置
共済⾦の積⽴は、所得控除の対象となることが多く、節税効果が期待できます。さらに、相続税負担の軽減効果もあるため、総合的な資産計画において重要な選択肢となり得ます。

■注意点

‧加⼊資格
⼩規模企業共済は、中⼩企業者や個⼈事業主に限定されているため、加⼊資格を事前に確認する必要があります。

‧積⽴⾦の上限
共済⾦の積⽴には上限が設けられているため、⾃⾝の資⾦計画に合わせて適切
な積⽴額を検討することが重要です。⼩規模企業共済等への加⼊は、中⼩企業の経営者や個⼈事業主にとって、退職⾦の確保と相続税負担の軽減の両⽅を⽬指す有効な⼿段です。ただし、加⼊する前には制度の詳細や⾃⾝に適した計画を理解するため、専⾨家のアドバイスを求めることが望ましいでしょう。

3.家族信託の活⽤
家族信託とは、資産所有者が⾃⾝の財産を信託し、将来的に指定された受益者に資産を移転する制度です。これにより、⽣前に資産の分配計画を明確にし、相続発⽣時の⼿続きを簡素化し、税負担を軽減します。

節税の仕組み
‧資産の事前移転
家族信託により、⽣前に資産を受益者に移転することで、相続時の課税対象資産を減少させることが可能。

‧資産評価の最適化
不動産などの資産を信託することで、資産評価のタイミングを選ぶことができ、相続税の評価額を最適化することが可能。

‧信託財産の特定財産扱い
信託された資産は、原則として信託期間中は受益者の財産とはみなされず、相続財産としての評価を回避できる場合があります。

家族信託の活⽤⽅法
■⽣前贈与との組み合わせ
家族信託と⽣前贈与を組み合わせることで、相続時にかかる税⾦の負担を減らすことができます。ここでは、この戦略を利⽤する具体的な⽅法を解説します。

■資産の選択と移転
設定者は、⽣前贈与を利⽤して不動産、株式、現⾦などの特定の資産を家族信託へ移転します。この際、年間110万円までの⽣前贈与の⾮課税枠を活⽤することで、贈与税の発⽣を抑えることができます。

■信託契約の設定
家族信託を設定する際は、信託契約を通じて受託者、受益者、信託財産の管理‧使⽤⽅法、信託期間を明確に定義します。この契約により、設定者の意向に沿った資産の管理と分配が確保されます。

■相続時の効果
設定者が亡くなると、信託契約に基づいて受益者への資産移転が⾏われます。このプロセスは相続とは別の法的⼿続きを経るため、相続財産の評価額に影響せず、結果として相続税が軽減されます。

■不動産の管理‧運⽤
不動産を家族信託に委ねることで、相続が発⽣する前に受益者へ計画的に移転することが可能となり、相続税の軽減に繋がります。

■事業承継
家族経営の企業の場合、家族信託を事業承継計画の⼀部として活⽤することで、滑らかな事業の引き継ぎが実現し、同時に相続税の負担も軽減できます。

4.もし株所有者の死亡後、申告せずにそのまま放置したら?
法的および財政的な問題が⽣じる可能性があります。

1. 相続税の滞納によるペナルティ
相続税に関する申告及び納税の期限は、被相続⼈の死亡⽇から数えて10ヶ⽉以内と定められており、この期限内に、相続税の申告を税務署に⾏い、計算後の税⾦を納付することが求められます。さらに、相続税申告には、被相続⼈の死亡⽇から5年間の時効が設けられています。申告書には相続される全財産の詳細リスト、それらの評価額、及び計算された相続税額を含める必要があります。適切な申告と納税がなされない場合は、追加の税⾦や罰⾦が課される可能性があります。

2. 名義変更の問題
‧株式の名義変更がない場合: 名義変更を怠ると、株式の売買や配当⾦の受領、株主総会での投票など、株主としての権利を⾏使することができなくなります。
‧財産管理の問題: 正式に相続⼈へ財産が移転されない場合、その財産の管理や利⽤に関して問題が⽣じます。

3. 相続⼈間の紛争のリスク
相続財産の分配が不明瞭な場合、相続⼈間で意⾒が合わなかったり、家族間のトラブルに発展する可能性があります。

4. 国庫帰属の可能性
相続⼈がいないか、全員が相続を放棄した場合、相続財産は最終的に国庫に帰属することがあります。ただし、これには法的な⼿続きが必要です。

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