非上場株式を売却したら確定申告が必要です

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非上場株式の売却が確定申告の対象となる理由は、幾つかあります。
基本的な理由としては、非上場株式の売却は、所得税の対象となるからです。売却時の収益は譲渡所得として扱われ、その金額に応じて所得税が課税されます。
また、非上場株式の売却には、源泉徴収が行われない場合が多いため、自分で所得税を確定申告して納税する必要があります。これにより、納めた税金が正確に記録され、適切な税金を納める事が保証されて証明が成されます。
さらに、確定申告を行う事で、納税者の所得や資産状況が税務当局に正確に報告されます。これにより、税務の透明性が確保され、税務上の問題を未然に防ぐ事が出来ます。
非上場株式の売却
非上場株式の売却には、税金の知識が必要です。売却して利益を得た場合、確定申告が必要ですが、その手続きは複雑です。安心して税金のトラブルを避けるために、正確に確定申告を行いましょう。
場合によっては還付金を受け取る事が出来たり、欠損金を繰越せるなど、メリットが生じるかも知れません。
〈株式譲渡をした際に、確定申告をしなければいけない人〉
□源泉徴収口座以外で株式譲渡による利益を得た人
□源泉徴収口座の譲渡損失を他の譲渡益から差し引く人
□譲渡損失を譲渡益から差し引く人
□過去3年間の譲渡損失を本年の譲渡益から差し引く人
□本年+過去2年の譲渡損失を翌年に繰り越す人
□その他
株式を譲渡した際、課税対象となるのは「譲渡益」です。
もし譲渡代金として仮に3,000万円を丸々と受け取っても、その全てが課税の対象となるわけではありません。
課税対象となるのは、受け取った代金から譲渡した株式の所得価額や、購入のための手数料等々を差し引いた金額となります。株式の取得に要した費用をいくら計上し、その内からいくら利益を得たか、という事です。
非上場株式を譲渡し利益が出た時の流れ
1.株式の譲渡制限の有無を確認⇒2.対象企業へ承認請求⇒3.株式譲渡承認請求が承認された場合⇒4.株主が名義書換請求⇒5.譲渡制限株式の譲渡完了⇒6.売利益「みなし配当」が生まれた⇒7.確定申告へ!
株式譲渡制限の有無は会社の全部事項証明書に記載されており、定款にて規定されています。
定款に
「譲渡により当社の株式を取得するには株主総会の承認を受けなくてはならない」
の様な項目があるかどうかで確認出来ます。 あれば、その株式は譲渡制限がかかっている可能性があります。
株式が譲渡制限付きの場合
株式譲渡承認請求書に、会社が譲渡承認をしない旨の決定をする場合、当該会社または指定買取人がその株式を買い取ることを請求したとき、
会社は譲渡承認請求にかかる対象株式を買い取るか、対象株式の全部もしくは一部を買取る者(指定買取人)を指定しなければなりません。
つまり下記3択の買取先を決める事が出来ます。
□会社が買い取る。
□指定買取人を指定する。
□会社と指定買取人が買い取る。
中小企業では多くの場合、会社の乗っ取り防止や意図しない人物へ株式が渡ってしまう事を避ける為に、譲渡制限を設けています。
譲渡制限付きの株式でも売却出来る
譲渡制限がある場合は、株式の売却手続きに特定の制限や条件が課される事があります。一般的には、株主や企業が株式取引に関する合意書を作成して制限事項を明記し、株主間で合意することが一般的です。
株式を譲渡する場合には、
・譲渡する株式の数
・株式を譲り受ける者の氏名または名称
を明らかにして、企業に対して当該譲渡を承認するか否かの決定を請求する事が出来ます。譲渡制限の詳細は会社によって異なる場合があります。
会社法136条
・株主からの承認の請求
譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとする時は、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得する事について承認をするか否かの決定をすることを請求する事が出来る。
会社法137条1項
・株式取得者からの承認の請求
譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求する事が出来る。
会社法138条
・譲渡等承認請求の方法
次の各号に掲げる請求(以下この款において「譲渡等承認請求」という。)は、当該各号に定める事項を明らかにしていなければならない。
株式譲渡した際に確定申告をしなくても良い場合
年間、株式などの利益が生まれれば確定申告が必要ですが、以下の場合に関しては、確定申告をする必要はありません。
△源泉徴収ありの特定口座を利用している場合
△年間を通して株式の譲渡損が発生している場合
△一般講座や源泉徴収なしの特定口座の譲渡益を含めた所得の金額が、所得控除の額より少ないケース
△年末調整で所得税の納税を完了している給与所得者で、納税を完了している給与所得者。
△納税を完了している給与所得者、給与所得や退職所得以外の所得が、一般口座や源泉徴収なしの特定口座の譲渡益を含めて20万円以下のケース
(本業以外で所得を得ている人は特に覚えておきたい所です。)
※公的年金による年間収入額が400万円以下の年金受給者に関しても、先にあげた各種口座の譲渡益を含めて20万円以下のケースも申告不要となります。
株式売却益「みなし配当」に関する税金
みなし配当とは、特定の条件下で株式の売却益を税法上みなしで配当として扱う制度です。
一般的に、配当所得として課税される株式の売却益が、みなし配当の対象となると、所得税法上の特別な処理が行われ、みなし配当として税金が課されます。
この制度は、株式の保有期間が一定期間以上の場合や、一定の条件を満たす場合に適用される事があります。
一般的には長期保有を促進するため、売却益を配当所得として課税することで、一定の税金優遇が受けられます。
みなし配当制度については、所得税法や税務当局のガイドラインなど、詳しい情報を確認することをお勧めします。また、個々の状況に合わせた税務上のアドバイスを得るために、税理士や税務専門家に相談することも重要です。
売却益は「みなし配当」として課税対象になります。みなし配当は本来の配当とは違いますが、株式発行会社から株主へ利益が分配されたとみなされ、受け取った個人には総合課税で所得税が課税されるのです。
その税率の上限は所得税45%、住民税10%の合計55%です。
総合課税は、非上場株式の課税評価額だけでなく給与など他のすべての所得が合算されるので、他の収入が多い人ほど税率が上がって行きます。そのため、特に高収入の人は負担が大きくなります。
仮に子どもが相続して相続税(上限税率55%、下図ご参照)を納めた後に株式発行会社に売却した場合、その売却益はみなし配当とされて総合課税の対象となり、再度、上限55%の税金を納めなければならないのです。
つまり、非上場株式に対して2度も課税されるのです(3年以内は特例あり)。
所得税の速算表
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% ―
195万円超~330万円以下 10% 97,500円
330万円超~695万円以下 20% 427,500円
695万円超~900万円以下 23% 636,000円
900万円超~1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超~4,000万円以下 40% 2.796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円
相続税の速算表
法1定相続分に応ずる取得金額(基礎控除後) 税率 控除額
1,000万円以下 10% ―
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
相続税が高い場合、売却は一つの選択肢
非上場株式の評価は、配当金のない株式発行会社の買取提示価格が低いというだけで、必ずしも低いとは限らず実際には、相続が発生した際に、思っていたより高い評価となり、相続税が高くなる事もあるのです。
相続税の評価額を理解し、高い相続税が予想される場合には前もって売却を検討する事も重要です。非上場株式の相続税は、国税庁が作成している「財産通貨基本通達」の「取引相場のない株式等の評価」に基づき、評価額が算出されます。
その際、贈与や相続で取得した株主が同族株式かどうかによって、評価方法が異なります。「原則的評価方式(類似業種比準方式、純資産価額方式およびこれらの併用方式)」が適合される場合や、「特例的評価方式(配当還元方式)」が適用される場合があります。
株式発行会社以外の法人へ売却する場合
例えば、非上場株式を発行会社に売却すれば税率の上限は55%ですが、一方で他の法人へ売却すれば一律で20.315%。2倍以上の差です。この大きな節税効果を利用しない手はありません。
復興特別所得税
復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)なら、税率は所得の大きさに応じて15.105%〜55.945%となります。(実際は控除額があるので、課税所得に単純に税率を乗じた額よりは少なくなります。)
実施期間は平成25年(2013年)から令和19年(2037)年までの25年間です。
非上場株式を売却して利益が出た時
非上場株式を売却して利益が出た場合、以下の手順に従って対処することが重要です。
1. 利益の計算: 非上場株式の売却価格から取得原価(購入価格や取得経費)を差し引いた金額が利益です。正確な計算を行いましょう。
2. 確定申告: 利益は所得税の対象となるため、確定申告が必要です。所得税の申告書に譲渡所得として該当する項目を記入し、利益に対して適用される税率で所得税を計算します。
3. 税金の支払い: 確定申告に基づいて計算された所得税額を納税期限までに納める必要があります。通常、確定申告の翌年の3月15日までに納付することとなりますが、地域や個別の事情によって異なる場合があります。
4. 書類の保存: 売却時の取引明細や関連する書類は、確定申告書の作成や税務調査などの際に必要となるため、必ず保管しておきましょう。
5. 税務相談:
以上の手順を遵守することで、非上場株式の売却に伴う利益に対する税金の適切な支払いや税務手続きを行う事が出来ます。
確定申告はいつからいつまでの譲渡損益について行う?
確定申告は1年間、受取日を起点として1月1日~12月31日までの譲渡に関して、原則として翌年の2月16日~3月15日に住民票のある所轄の税務省へ申告します。
確定申告に関して疑問や不明な点がある場合は、税務署や税理士に相談する事で税務手続きを正確に行い、トラブルや不当な課税が防止出来ます。
国税庁の「税の相談サービスコーナー」や地方税務署の相談窓口などがあります。ここでは、無料で確定申告手続きや税金の計算方法、必要な書類などについて専門の担当者が丁寧に説明やアドバイスをしてくれます。
また、一部の税理士会や消費者団体でも確定申告の相談窓口を設けている場合があります。こちらも無料で相談を受け付けてくれるため、自身で確定申告について不安がある場合は、利用してみると良いでしょう。
準備するもの
通常の確定申告に必要な書類がいくつかあるので事前に確認しておきましょう。
●本人確認書類、マイナンバーカードなど
●印鑑(シャチハタ不可)
●金融機関の口座番号
●所得が証明できる書類
●控除を受けるための証明書類
●申告書
本人確認書類としてはマイナンバーカードを持参出来れば各種確認作業がスムーズに行えます。
専門家に全て委託する事も
非上場株式を最初から確実に正しく売却から申告を行うには準備に時間がかかる、通知期間の指定がある、専門知識が無い、といった方には委託料はかかりますが、トラブル回避の為にも専門家への相談をお勧めいたします。