関西の電子機器メーカーZ社、E氏の事例
【日付】
・相談日 | 2021年10月6日 |
・株式取得日 | 2022年 9月21日 |
・発行会社との和解日 | 2022年12月12日 |
【状況】
E氏のお父様は、電子機器メーカーZ社の創業メンバーの一人でした。お父様が亡くなった際に兄妹で株式を相続しました。
Z社は年商30億円、利益は2~3億円、現預金17億円、自己資本比率60%の優良企業であるにもかかわらず、配当が全くない状況が続いていたようです。
E氏は現役時代、大手の金融機関で経理部にいたため、決算書を読むことには精通していましたので、本来の株式の価値を理解していました。しかし、Z社は業績が良いにもかかわらず配当も出さず、一方で自分たち役員の報酬は引き上げてきた経緯があります。これらを考えれば、Z社に売却したとしても、とんでもない低価格であろうことは容易に想像できました。実際にE氏の妹が株式売却につきZ社に打診したところ、案の定、額面の50円/株なら買い取ると言われたそうです。
そこで、当社に、買い取ってもらえないかという相談があったのです。
ところが、定款に「相続人等に対する売渡請求権」が規定されていることがわかったため、売渡請求されないようにじっと時が過ぎるのを待ち、その後、Z社が相続を知りえて1年、つまり、社長がお父様の葬儀に参列した日から1年が過ぎ、ようやく、第三者の私の会社に譲渡されたのです。
【買取方法・買取額】
Z社の簿価純資産は1500円/株でしたが、ここ数年、経営陣への利益分配を増やすように経営を変更してきており、利益の低下が著しいこと、このような経営方針が続くようなら将来性も懸念されることから、兄妹の所有株式をすべて600円/株で買い取ることとなりました。
株式譲渡契約締結に向けて、E氏兄妹は早速Z社に株券発行の依頼をしました。定款上株券発行会社となっていたのに、長年株券を発行していなかったのです。
株券発行会社なのに株券を発行していない会社は非上場会社では非常に多いです。ましてや同族会社ならなおさらのこと、親族間でなあなあで済ませている会社がほとんどと言っても過言ではありません。
ですので予想はできたことですが、E氏の依頼に対し、印刷コストがかかるので株券は発行しない、とZ社から拒否回答がきたのです。発行するしないで平行線となり、時間はかかりましたが、会社法に基づき、株券が発行され送られてきたため、私の会社とE氏の株式譲渡契約が締結できました。
【お客様の感想】
E氏には、「Z社提示価格の12倍で買い取って頂いたうえに、定款の「相続人等に対する売渡請求権」が規定されているという、私たち兄妹だけでは気付かないことまで丁寧に教えて頂き、本当に感謝しています。また、株券を発行しないと言われた段階で心が折れて諦めていたかもしれません。とても心強かったです。相談してよかったです。」と言ってもらえました。
【結果】
その後、当社は株主として社長に面談申し入れをし、お会いすることができました。当初は、外部の者に株式譲渡したことに憤慨されている様子だったのですが、そのうち少し冷静になられたのか、分散した株式を纏められるのは得策だと考えたようでした。
その後、株価の協議となり、結局簿価純資産には及びませんが、1000円/株で譲渡することとなりました。