中小企業の非上場株価が生み出す利益

中小企業の持つ非上場株式の場合、「事業承継」「少数株主からの株式買い取り」「相続」「M&A」「ベンチャーキャピタルからの資金調達や増資」などで株価算定が必要となる場合があります。

 

 

「中小企業の株価ってどうなの?」

「中小企業の株価と言ってもスタートアップ以外には利益を生まないんだろう?」

 

 

中小企業の株価が投資家に疑心暗鬼に思われている典型的なご意見ですね。株式投資の基本的な還元メカニズムは中小企業でも大企業でも基本的には同じですが、中小企業特有の側面があります。

 

 

中小企業の株価は、非上場株式と呼ばれ、一般的には株式市場で売買されません。そのため、株価を算定するには、特別な評価方法を用います。

 

 

 

目次

中小企業の非上場株式を評価する

 

中小企業の非上場株式は、一般に公開されている市場データに基づく評価が難しく、企業の財務状況、業績、将来性などを総合的に考慮します。

 

 

  1.   収益ベースのアプローチ

 

企業の将来の収益能力を基に株価を評価します。将来予想されるキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価するDCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)法が一例です。

 

 

  1.   資産ベースのアプローチ

 

企業の純資産価値(資産から負債を差し引いた価値)を基に株価を算出します。この方法では、企業の持つ資産の公正な市場価値を評価する必要があります。

 

 

  1.   市場アプローチ

 

類似の業種や市場における他の企業の評価や取引事例を参考にして株価を評価します。これには、同業他社の売買事例や業界平均の倍率(P/E比率やP/B比率など)を用いる方法があります。

 

 

  1.   コストアプローチ

 

企業を現在の状態から再構築するのに必要なコストを基に株価を評価します。この方法は、主に資産が主要な価値を持つ企業に適用されます。

 

 

これらの方法は得手不得手あり、実際の評価では複数の方法を組み合わせ使われます。非上場企業の株価評価は複雑で、専門的な知識と経験を要するため、通常は専門の評価会社やファイナンシャルアドバイザーに依頼します。

 

 

 

安く買って大きく回す

 

 

自社株の評価は相続税に影響し、評価が高いと後継者の負担が増えます。株価を低く保つには、売り手と買い手の合意があればどのような価格でも売買が可能です。

 

 

但し、税の問題が発生します。税務当局が「適正株価の計算方法」を定めており、それに基づいた株価で取引しなかった場合は、差額を贈与として課税されることになります。

 

 

例えば、1株あたり1,000円で安く譲渡してもらったが、その適正株価が10,000円だった場合、差額の9,000円が贈与とみなされて、買った方に贈与税が課せられます。

 

 

この時の適正株価を算出する評価方法を「原則的評価」と呼び、この原則的評価の中に「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」、あるいは「この2つの折衷方式」があります。

 

 

純資産価額方式と類似業種比準価額方式による評価の特徴は以下の通りです。

 

 

【純資産価額方式(NAV: Net Asset Value)】

 

この方式では、ファンドが保有する資産の総額から負債を差し引いたものを、ファンドの発行済み株式数または口数で割り、1株または1口当たりの価値を算出します。この計算により、投資家はファンドの1単位あたりの正確な価値が求められます。

 

 

【類似業種比準価額方式】

 

体的には、類似企業の市場データ

(例:株価収益率[PER]、企業価値を算出するEBITDA倍率など)

を基準にし、評価対象の企業の理論的な市場価値や企業価値を比較により値付けします。資産家や分析者は評価対象の企業が業界内でどの程度の価値を持つか把握できます。

 

MEMO

 

一般的には純資産価額方式のほうが、類似業種比準価額方式より10倍も高く計算されるケースが殆どです。

 

 

 

中小企業の株式を、育てて売り渡したい

 

中小企業の株式を購入して育て、後に売り渡すという戦略は、一般にプライベートエクイティ投資やベンチャーキャピタル投資と関連しています。日本でこのような投資を行う場所や方法にはいくつかのオプションがあります。

 

 

  1.   プライベートエクイティファンド

 

特定の中小企業に特化したプライベートエクイティファンドに投資することができます。これらのファンドは、ポートフォリオ企業の成長を支援し、価値を向上させることを目指しています。

 

 

  1.   ベンチャーキャピタル

 

スタートアップや成長期の企業に対する直接投資を行いたい場合、ベンチャーキャピタルが適しているかもしれません。これらの投資家は通常、企業の成長段階に応じて資金を提供します。

 

 

[注意!]

 

プライベートエクイティファンドやベンチャーキャピタル投資は高額の最低投資額(300万円以上)が設定されているため、注意が必要です。

 

 

  1.   M&Aプラットフォーム

 

企業の売買を仲介するプラットフォームがあり、中小企業の株式を直接購入する機会を提供する場合があります。これらのプラットフォームは、買い手と売り手をつなぐ役割を果たします。

 

 

  1.   クラウドファンディングプラットフォーム

 

一部のクラウドファンディングプラットフォームでは、投資家が中小企業やスタートアップに資金を提供する機会を提供しています。これにより、小規模ながらも直接的な投資が可能になります。

 

 

  1.   直接アプローチ

直接企業にアプローチし、株式の購入交渉を行う方法もあります。これは、特定の業界や企業に深い知識がある投資家にとって有効な方法です。

 

 

 

自分で起業し、最終的に会社を売る

 

非常に報酬が高いが複雑な道のりです。プロセスの概要をまとめてみました。

 

 

  1.   アイデアの確立と市場調査

まず、実現可能で競争力のあるビジネスアイデアを持つことが重要です。市場調査を行い、目標顧客、競争相手、市場ニーズを理解します。

 

 

  1.   ビジネスプランの作成

ビジネスの目標、計画、財務予測などを詳細に記載したビジネスプランを作成します。

 

 

  1.   法的構造の選定と設立

事業体のタイプ(有限会社、株式会社など)を選択し、必要

な法的書類を準備して事業を正式に設立します。

 

 

  1.   資金調達

自己資金、投資家からの資金調達、銀行ローンなど、事業の立ち上げと成長のための資金を確保します。

 

 

  1. 製品開発と市場への導入

製品やサービスの開発、テスト、そして市場への導入を行います。

 

  1.   成長戦略の実行

マーケティング、セールス、パートナーシップを通じてビジネスを成長させます。

 

 

  1. 出口戦略の計画

事業を売却する目的であれば、初期段階から出口戦略を考え、ビジネスをそれに向けて成長させる必要があります。

 

 

  1. 買い手の探索と交渉

潜在的な買い手を探し、買収に関する交渉を行います。このプロセスには、ビジネスブローカー、M&Aアドバイザーなどの専門家の助けが必要になることがあります。

 

 

  1. デューデリジェンスと契約の締結

買い手は、財務状態、法的義務、その他の重要な情報を評価するためにデューデリジェンスを行います。

双方が合意に達した後、契約を締結し、取引を完了します。

 

 

  1. 移行と後継

会社の所有権が移転された後、スムーズな移行を保証するために、しばらくの間はコンサルティングやサポートを提供すすることがあります。

 

 

このプロセスは大まかなガイドラインであり、成功への鍵は、市場の知識、投資理解、リスク管理のスキルを持ち、専門家のアドバイスを受けつつ柔軟に対応することです。

 

 

 

 

会社を相続する

 

「遺産分割協議の調停、年間1万6000件!」

 

これは日本における遺産協議の件数です。相続税が高額でやむを得ず会社を譲渡し相続を断念する方は少なくありませ日本における中小企業は全企業数の多数を占めます。

 

 

M&Aで買収した株式や事業は、実際の価値や買収額とは関係なく、相続税のルールで純資産を再計算して評価します。

 

 

 

のれん(営業権)について

 

時価純資産と買収額の差額である「のれん(営業権)」については、かなり低めの金額が算出されるルールになっており、のれんが低いとその分、相続税や贈与税の評価額が低くなるため、税負担が軽減されます。

 

 

役員報酬差引前の年間利益が5,000万円以下の場合、のれん(営業権)はゼロ円で評価されます。

年間利益が5,000万円を超える場合でも、実際にM&Aで売買される金額よりはるかに低価格になることが大半です。つまり、事業買収によって相続税の評価を大幅に下げる事が可能です。

 

 

特に、年間利益が5,000万円以下の場合には、のれんはゼロ円と評価されるため、事業買収後の相続税負担を大幅に軽減することが可能です。

 

 

 

実際の株式譲渡例でのれん(営業権)を計算

 

A社がB社を買収する場合を考えてみます。A社はB社を買収する際、B社の時価純資産に対してプレミアム(追加金)を支払い、合計で2億円の買収額で合意しました。

 

しかし、B社の年間利益が5,000万円をわずかに超える6,000万円であったとします。

 

この場合、のれんの計算においては、非常に限定的な価値しか認められず、相続税評価額におけるのれんの金額は、実際に支払われた買収額に比べて大幅に低くなる可能性があります。

 

 

 

非上場株式譲渡成功例

 

企業家I氏は革新的な商品を製造し販売する会社を立ち上げました。その会社は非上場ではありましたが、その技術が業界で応用可能なことが認識されて来ました。

 

 

一方株式の取引は私的に行われていたに過ぎませんでしたがその技術力の将来性に投資家達から注目が集っていました。

 

 

中でもY氏はI氏の会社をいち早く見抜き、非上場株式の譲渡によって3万株を300万円で手に入れることに成功しました。

月日が経過しI氏の会社は業界でも評判になり売上を伸ばして行きました。それによりY氏の買った株式も価値が右肩上がりしているとY氏は自ら直感しました。

 

 

そしてある時点でY氏はI氏の会社の株式を1,140万で売却し、これにより粗利益は840万円になりました。

 

 

上記は譲渡が成功した例となりますがうまく行かないことも当然のことながら存在します。

 

 

 

未上場株式譲渡で失敗するケース

 

以下を参考にし、失敗をしないように心掛けましょう。

 

 

  1.   デューデリジェンスの不足

買収前の徹底した調査を怠った結果、隠れた負債や法的問題が後になって発覚、買収後の経営に大きな損害を与えるケースが生じました。

 

 

  1.   評価額の誤算

企業価値の過大評価や、市場環境の変化を考慮しない評価が行われ、実際の価値よりも高額での取引が行われた結果、買収後にその価値を回収できない事例がありました。

 

 

  1.   統合プロセスの失敗

買収後の文化の衝突や経営方針の不一致により、お互いの相乗効果を得られずに失敗に終わるケースも存在しました。

 

 

  1.   契約書の不備など

契約書の内容が不明確であったり、重要な条項が欠けていたりすることで、後のトラブルの原因に繋ったことがありました。

このようなケースを踏まえた上で、中小企業の非上場株式投資は、適切な評価と戦略を駆使することで、大きなリターンの可能性を模索するビジネスです。

 

 

何より重要なのは専門知識とリスクヘッジであることは多くの投資家が口を揃えて言っています。

 

 

専門家のアドバイスに基づき、自ら経営に乗り出す、有利な投資を導き出す、投資パートナーを探し共同で行う、等々ビジネスの選択肢が色々あり、自分にあった物を探し出す醍醐味が隠されているのが未上場株取引です。

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