株式の名義を変更するには?

被相続人が保有した株式は、そのままでは相続人が権利を行使したり現金化する事は出来ません。誰かから株式を譲り受けたり、相続して株式を引き継いだりした場合、株式の名義変更が必要です。

目次

株式の名義変更をする上での注意点

株式を名義変更するには幾つかの注意点があります。

株式会社での名義変更
株主となる法人が変わる場合、株主総会での決議が必要となります。株主総会の議決により、名義変更の手続きが進められます。

個人での名義変更
個人の場合、名義変更は比較的簡単ですが、証券会社や金融機関のルールに従った手続きが必要です。通常、証券口座の名義変更申請書や委任状といった書類が必要となります。

税務に関する注意
名義変更が所得税や贈与税に影響を及ぼす場合があります。

金融機関や証券会社の手続き
名義変更手続きは、証券会社や金融機関の内部規定に基づいて行われます。必要な書類や手続き方法は、関係機関のウェブサイトやカスタマーサービスに問い合わせ、詳細を確認する事が出来ます。

具体的なケースは、地域によって異なる場合がありますので、名義変更を行う前に、専門家や関係機関に相談する事をお勧めします。

株式を名義変更する手順

株式を相続して名義変更するには、以下の手順が必要です。

相続人の間で遺産分割協議を行い、株式の相続人を決める。
相続人が証券会社や信託銀行に口座を開設する。
株式の発行会社や証券会社に名義変更の手続きを依頼する。
必要な書類を提出する。

内容により異なる手続き

株式の手続き方法はケースバイケースで、様々な内容につき手続き方法が異なります。内容に注意して手続きを踏まえていく必要があります。

株式の名義変更は生前と死後で異なる

例えば、父親名義の株式を、父親から長男に譲る場合、父親が生きている間に行うと「贈与」となります。この場合、贈与税がかかります。具体的には、贈与税法第2条,第15条で規定されており、一定額以上の贈与には贈与税の申告と納税が必要です。

一方、父親が亡くなった事で、父親名義の株式を長男が引き継ぐ場合は「相続」となります。税金は「相続税」の対象となり、他の財産の状況にもよりますが、相続税法第1条,第16条で規定されている通り一定額以上の相続財産を貰う場合は相続税の申告と納税が必要になります。

尚、父親名義の株式が、東京証券取引所などに上場している上場株式か、上場していない非上場株式かによっても、その株式の財産的価値の評価方法が異なります。それにより手続き方法が違うので、上場株式か非上場株式かの確認が重要となって来ます。

上場株式を生前に名義変更

上場株式を生前に名義変更し、父親が息子に対して生前贈与する場合、その株式の評価額によっては、財産を貰った長男が、贈与税の申告と納税をする可能性があります。

名義変更の手続きは、上場株式の場合、取引をしている証券会社を通じて行います。

例えば、父親がAB証券を通じて買っていた○✕自動車の株式を長男に贈与する場合、その名義変更の手続きは、株式の発行会社である〇✕自動車ではなく、取引証券会社であるAB証券を通じて行うのです。

非上場株式を生前に名義変更(贈与)する場合

非上場株式を子どもに名義変更する場合も、これは贈与と見なされ、贈与税が適用されます。

非上場株式の場合、贈与税の計算は少し複雑になります。贈与税法第16条の規定により、非上場株式の評価は市場価値が明確でないため、国税庁が定める特別な評価基準に基づいて行われます。

贈与される株式の価値が贈与税の基礎控除額を超える場合、その超える部分に対して税金が課せられます。

経営支配権の移転と贈与税の選択肢

また、贈与税の負担が(相続の時まで待って相続による移転を行い相続税を負担するのより)高い場合でも、経営支配権を確実に引き継がせる、という意味で、贈与を選択する場合も考えられます。

贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税の2種類がありますが、相続時精算課税は原則として、節税効果がないため(贈与しても結局は相続税の課税対象となってしまうため)、まずは暦年課税による贈与を検討したほうが良いと言えるでしょう。

暦年課税

暦年課税は、年間110万円の基礎控除を超えた部分に対して贈与税をかける方法です。つまり、財産を貰った人が、1年間でもらった財産の評価額が合計110万円以内であれば贈与税はかからないということです。

相続時精算課税

一方、相続時精算課税は、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子や孫が贈与を受ける場合に使える制度を指します。

2024年からは相続時精算課税にも年間110万円までは申告不要とする基礎控除が新設されます。基礎控除はその後の相続の際にも適用され、
相続税の課税対象は基礎控除後の残額のみ(=年間110万円を超える部分として過去に贈与税の申告をしていた部分のみ)で良い事になります。
また、贈与財産の種類や贈与回数に関係なく、合計2,500万円までであれば、贈与の段階では課税せず、贈与者である父母または祖父母が亡くなった時、相続財産に戻して相続税を計算し、相続の際に精算します。

遺言の有無によっても異なる

相続発生後の株の取り扱いは、遺言の有無によって異なります。有効な遺言書で株の相続人が指定されている場合はその通りに相続が行われますが、遺言書が無い場合、株は相続人全員の「共有」となるのが原則です。

一旦共有となった株は、遺産分割協議によって相続人が決まります。複数の株がある場合は一人の相続人がまとめて相続する事も出来ますし、幾つかに分割して複数の相続人で分ける事も可能です。

いずれにしても遺産分割協議で相続人を決定し、名義を書き換えるまで株式の譲渡などは出来ません。

名義変更は遺産分割後に行う

株の名義変更は、遺産分割協議によって相続人が決まった後に行います。上場株式の場合は証券会社や信託銀行の窓口で、非上場株式の場合は株式を発行している会社と直接やりとりをして名義を書き換えるのが一般的です。

亡くなった方(被相続人)がお持ちの株式等を相続する場合、基本的には故人の口座と同じ証券会社取得者(相続人)名義の口座に移管する事になります。

贈与税がある程度免除される場合

日本に住む特別障害者あるいはそれと同等の人が、自分たちのために設けられた信託から得られる経済的な利益(信託受益権)について、特定の手続きを行うことで贈与税を免除される制度があります。

信託受益権の価額(信託財産の価額)のうち、6,000万円(特別障害者以外の者は3,000万円)までの金額に相当する部分については贈与税がかかりません。

非上場株式保有者死亡後に相続する場合

非上場株式を相続する事になった場合、まずは誰が相続人に該当するかという相続人調査を行います。

相続人に漏れがあった場合、一度遺産分割協議が成立したとしても再びやり直さなければいけないため、遺産分割協議前に被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを取得して、相続人の範囲を確定させる必要があります。

相続財産調査
相続財産を調査する際、故人が保有していた上場株式は、証券会社や証券保管振替機構に問い合わせて確認できます。

しかし、非上場株式の場合は、株式発行会社へ直接連絡して情報を得る必要があります。また、故人が使用していた証券会社の口座が既にあれば、新たに開設する必要はありませんが、口座がなければ新しく作る必要があります。

証券会社口座開設の流れ
証券口座開設の際の手続きの流れと必要書類は、証券会社によって多少異なりますが、概ね以下の通りとなっています。

インターネットや電話又は証券会社の店舗窓口で口座開設申込書を請求。
申込書に必要事項を記入の上、必要書類と一緒に郵送等で提出。
提出書類に不備が無ければ1週間程度で口座開設の通知が届き、手続き完了。

主な必要書類

マイナンバー(個人番号)が確認できる書類
本人確認書類(運転免許証、各種健康保険証、各種年金手帳、パスポート等)
届出印(開設する証券会社や開設の方法によっては不要なところもあります。)
配当金等の振込先金融機関の口座情報がわかるもの(通帳のコピーなど)

株式の種類による相続手続きの違い

上場株式の場合

上場株式は証券会社や信託銀行によって管理されています。相続の際は、故人が保有していた株の詳細を知るために、証券会社から「取引残高確認書」または「評価証明書」を取得します。

この書類には保有株式の情報が記載されており、相続人が要請すれば発行されます。手続きは証券会社と株を発行している会社の両方で必要になります。

非上場株式の場合

非上場株式は証券会社では管理されていません。そのため、株式発行会社に直接問い合わせる必要があります。不明瞭な点があれば、司法書士や税理士などの専門家に相談することを検討しましょう。

株券発行会社か株券不発行会社か?

〈株券発行会社の場合〉
株主が株券を会社に提示をすれば、会社は原則として書き換えに応じる必要があり、株主名簿の変更に応じられない場合には合理的な理由を会社側が提示しなければなりません。

〈株券不発行会社の場合〉
株券不発行会社が名義変更する際には、株券は無いので、株式を譲渡した元株主と株を譲り受けた現株主が連名で株主名簿の書き換えを会社に請求しなくてはなりません。

株券がなく、株主名簿に記載されている事項しか、会社側は確認が出来ない為、両名の請求が必要となります。

証券会社の取引口座の名義変更
まず証券会社の取引口座の名義変更手続きをします。
各証券会社により方法は異なって来ます。 株主名簿の名義変更に関しては、証券会社が代行して手配してくれます。

主に求められる書類内容

細かな手続き方法や必要な書類は、証券会社ごとに異なります。よく注意して揃えておきましょう。

取引口座引き継ぎ念書
相続人全員の同意書(証券会社等の用意する所定の用紙)または、遺産分割協議書
相続人全員の印鑑証明書
故人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
相続人の戸籍謄本
株券(株券不発行の会社もあります)
相続による株式名義書換請求書
(いずれにせよ遺産分割協議が重要です。)
贈与契約書のコピー
贈与者の印鑑登録証明書
贈与手続依頼書
その他

大抵1銘柄につき2,200円、5銘柄以上は一律1万1,000円の移管手数料がかかります(※楽天証券、SBI証券の場合。手数料は、証券会社によって異なります)。

手数料を負担するのは、贈与者(あげる人)です。  
尚、名義変更の手続きをする際は、受贈者(貰う人)も贈与者と同じ証券会社に口座を持っている必要があります。

名義変更時の税金と株式評価方法

手続きが終わって名義変更が完了すると、贈与者から受贈者への贈与が完了した事になります。贈与税がかかるかどうかは、財産を贈与された人が、1年間で合計幾らの財産を貰ったかによります。

株は相続後、遺産としてどれほどの価値(価額)なのかを「評価」する必要があります。というのも相続税の計算時に、評価額を基準とするためです。
また、株は遺産分割協議のときにも評価額で考えます。

上場株式を相続した場合、原則として、被相続人が亡くなった日の終値が評価額の基準となります。その上で以下4つから最も低い価額を選び、相続税の申告時の株価とします。

上場株式の相続税評価額の算定の方法

相続開始日の終値
課税時期の月の毎日の最終価額の平均額
課税時期の月の前月の毎日の最終価額の平均額
課税時期の月の前々月の毎日の最終価額の平均額

詳しくは、国税庁のホームページ「No.4632 上場株式の評価」をご覧下さい。

手続きが面倒でわからない
時間が無い
自分で名義書換をするのが難しい
証券会社の問い合わせ窓口に質問しても不明な点がある。

株式の名義や変更は重要な手続きですので、慎重に対処したいものです。地域や個別のケースによって手続きが異なる可能性がありますので少しでもご不明な点があれば、法律の専門家に相談し、適切なアドバイスを受ける事で、正しく、より簡単に手続きを済ませられます。

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