非上場株式を個人同士でやり取りするときのノウハウ

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非上場株式の譲渡は個人同士でも可能なのでしょうか?その答えはYES!です。

非上場株式は譲渡もできます。非上場株式を譲渡するタイミングは、何時でもOKです。非上場株式を、個人が個人に譲渡する事業承継・自社株対策・相続以外のときでも譲渡は可能です。

非上場株式とは証券取引所に上場しておらず、限られた人しか取引できない株式のことです。一方、上場株式とは証券取引所を通じて売買できる株式のことをいいます。別名「公開株式」とも言います。

それに対して非上場株式は証券取引所に上場しておらず、限られた人しか取引できない株式のことです。取引を公開していないことから、別名「非公開株式」とも言われます。

 

 

 

直接取引する場合

株式譲渡契約を結び、個人で売買する形となり、契約書を書き、終結する上で法律の知識が必要に迫られます。
個人間で直接取引する主な流れは次の通りです。

株式査定をする
相手企業がどの位の価値を持つか様々な分野から査定し、価値を算定します。これを業界ではデューデリジェンス(Dd)と言います。

デューデリジェンスで査定する項目は、主に以下のものがあります。
企業の財務状況
成長性業界内での位置づけ
経営陣の実績
法的な問題
運営状況 等

 

デューデリジェンスでは、キャッシュフローも分析します。
キャッシュフローは、一定期間内、企業や個人の現金の流入と流出を調べます。これは財務分析において企業の健全性や資金繰りの状態を把握する上で欠かせない指標です。キャッシュフローの主要項目は以下の3つです。

 

営業におけるキャッシュフロー
企業の主要な事業活動から生じる現金の流れです。

投資活動によるキャッシュフロー
企業が資産を購入または売却することによって生じる現金の流れで設備投資、不動産の購入や売却、または他社株式の取得や売却などもこれに含まれます。

金融活動によるキャッシュフロー
企業が資金を調達または返済することによって生じる現金の流れです。

株式投資型クラウドファンディングを利用する場合
取引する両者の間に投資型クラウドファンディング事業者が介入し契約手続きから資金の受け渡しまで全て代行します。
ただし利用者は限定されていて、投資経験が問われたり、金融資産が300万円以上の者に限られます。

価格の算定
取引相手が見つかっていざ取引、というときに、以下3つの価額を明確にしておく必要があります。

取得価額 ( 売主が取得した際の価額 )
時価 ( 評価額、あるべき価額 )
譲渡価額 ( 実際に取引を行う際の価額 )

※非上場株式の場合は上場株式と違い、時価が取引されていないので価額は判りません。なので専門家に調査を依頼しデューデリジェンスを行い、国税庁が定めている「財産評価基本通達」によって非上場株式の評価をします。

譲渡価額による取引の違いについて

譲渡価額によって次の3つの取引に分けて考えます。

時価による譲渡 ( 時価 = 譲渡価額 )
時価より低い価額による譲渡 ( 時価 > 譲渡価額 )
時価より高い価額による譲渡 ( 時価 < 譲渡価額 )

時価による譲渡
非上場株式の譲渡を時価で行った場合、すなわち譲渡価額=時価の場合は次のようになります。

取得価額(200円)
時価(1,200円)
譲渡価額(1,200円)

 

〈売主(個人)〉
譲渡価額(1,200円) - 取得価額(200円) = 譲渡所得(1,000円)
売主(個人)には、儲けた譲渡所得(1,000円)に対して、所得税等がかかります(※)。

 

(※)譲渡所得税とは、株式を譲渡したときに課税される税金のことです。2024年現在の税率は20.315%となっています。

 

〈買主(個人)〉
買主(個人)については、課税関係は発生しません。

 

時価より低い価額による譲渡
非上場株式の譲渡を時価より低い価額で行った場合は次のようになります。

取得価額(200円)
時価(1,200円)
譲渡価額(800円)

 

〈売主(個人)〉
譲渡価額(800円) - 取得価額(200円) = 譲渡所得(600円)
売主(個人)には、儲けである譲渡所得(600円)に対して、所得税等がかかります(※)。

 

〈この場合買主(個人)は〉
時価(1,200円) - 譲渡価額(600円) = みなし贈与(600円)
時価よりも低い価額で非上場株式を買った場合、時価と譲渡価額の差額(600円)に対して、みなし贈与として(買主(個人)が売主(個人)から贈与を受けたものとして)、買主(個人)に贈与税が課税されます。

 

時価より高い価額による譲渡
非上場株式の譲渡を時価より高い価額で行った場合は次のようになります。

取得価額(200円)
時価(1,200円)
譲渡価額(3,600円)

 

〈売主(個人)〉
譲渡価額(3,600円) - 時価(1,200円) = 贈与財産(2,400円)
時価よりも高い価額で非上場株式を売った場合は、譲渡価額と時価の差額(2,400円)について、売主(個人)が買主(個人)から贈与を受けたものとして、売主(個人)に贈与税が課税されます。

 

時価(1,200円) - 取得価額(200円) = 譲渡所得(1,000円)
売主(個人)には、上記の贈与税に加えて、時価による儲け部分である譲渡所得(1,000円)に対して、所得税等がかかります(※)。

 

〈買主(個人)〉
買主(個人)については、課税関係は発生しません。

〜個人から個人への譲渡〜
個人《売り手》

対価の額がそのまま譲渡所得の収入金額となる。(所得税法36①)

個人《買い手》

対価<時価の場合、みなし贈与になる可能性。

この場合(相続税法7条)の時価は

評価通達178〜189-7

 

非上場株式の譲渡にかかる税金の種類

 

(1)個人が個人に譲渡した場合の課税関係(対価=時価の場合)

売手(個人) 譲渡所得への課税がある(所得税の申告分離課税)
買手(個人) 課税関係は生じない(財産を取得するのみ)

(2) 対価が、税務上の時価よりも著しく低い場合(低額譲渡の場合)

  課税関係 税務上の時価
売り手(個人) 譲渡所得への課税がある(所得税の申告分離課税) ※ 買手側にみなし贈与課税が発生する場合であっても売手は影響を受けず、(1)の場合と同様に、対価により譲渡所得を計算する。
買い手(個人) 時価よりも著しく低い価額により譲渡を受けた場合には、対価と時価との差額について、みなし贈与の課税(相続税法7条)を受ける。 評価通達178~189-7に従って算定

みなし贈与とは
みなし贈与税は、特定の状況で資産の移転が贈与とみなされ、贈与税が課される制度です。
たとえ金銭の授受がなくても、資産が実際の市場価値よりも安い価格で譲渡された場合、その差額が贈与とみなし、贈与税が課税され、税負担を意図的に回避する行為を防ぐことが目的です。
贈与した資産の時価が取得価額より高い場合、その差額が譲渡所得として課税されます。
しかし、個人間の贈与では、値上がり益は受贈者に引き継がれ、贈与者には所得税ではなく贈与税が課されます。これはニ重課税を避けるための措置です。

 

みなし贈与判定時における(税務上の)時価とは
(税務上の)時価とは、法律で明確に定義されていませんが、実際には評価通達に従って決められることが多いです。
判例では、時価は「客観的交換価値」とされていますが、市場がない非上場株式などの価値は評価が難しいため、通常、評価通達を使って税務上の時価を決定しています。

評価通達における株価算定について
非上場株式の価値は、評価通達に基づいて決まり、買う人が支配株主や多数株主かそれとも少数株主かによって算定方法が変わります。
多数株主の場合は株価が比較的高く、少数株主の場合は低くなりがちです。そのため、同じ株式を買っても、買う人が多数株主になるか少数株主になるかで税務上の時価が異なります。

●買手が、取得後に支配株主となる場合→原則的評価方式(類似業種比準方式、純資産価額方式等)

●買手が、取得後に少数株主となる場合→特例的評価方式(配当還元方式)

 

時価より著しく低い価額とは

みなし譲渡として消費税が課税されるケースがありますので、ご紹介します。
消費税は、法人、個人にかかわらず、事業者が事業として資産の譲渡や貸し付け、サービスの提供をして対価を受けたときに課税されます。

資産の贈与や家事使用(個人事業主が事業用の資産を家事のために使用すること)では、対価を受けないため、本来は消費税の課税対象になりません。
しかし個人事業主が(※)著しく低い価額で、事業用の資産を家事使用のために譲渡した場合、消費税が加算されます。

(※)著しく低い価額とは、棚卸資産以外の資産の場合は譲渡時の時価の50%未満、棚卸資産の場合は通常の販売価額の50%未満または仕入価額未満の価額を差します。

みなし贈与に関する「時価より著しく低い価額」の判定基準について、参考となる情報としては、国税庁HPのタックスアンサーNo.4423「個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」の中で下記のような記述があります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4423.htm
著しく低い価額の対価であるかどうかは、個々の具体的事案に基づき判定することになります。

主な譲渡例
個人Aから個人Bへの贈与、個人Bから個人Cへの譲渡による株式譲渡の場合、取得原価は株券記載の金額をもとに納税額を算出します。
個人Aが、15万円の株式を当時の適正価格30万円のときに個人Bへ贈与した場合、個人Aの利益はないので、税金は発生しません。
そのあと、個人Bから、この15万円の株式を適正価格115万円で個人Cへ売却するときの、個人Bの譲渡益は100万円(115万円-15万円)です。
譲渡益は、売却価格と取得原価との差額で算出されます。ここで、個人Bが個人Aから贈与された時の株式の適正価格は30万円でしたが、贈与による取得の場合、通常、取得原価は贈与者の取得原価(この場合は15万円)を継承します。
個人Bがこの株式を115万円で売却した場合、その譲渡益は売却価格(115万円)から取得原価(15万円)を差し引いた金額、すなわち100万円となります。
この譲渡益に対しては所得税および住民税が課税されます。日本の税制においては、譲渡益は「譲渡所得」として分類され、一定の条件下で特定の税率が適用されます。
ただし、贈与を受けたら、贈与税の申告が必要になる場合があります。
贈与税は、贈与された財産の価値に応じて課税されますが、年間に一定額(2023年の基準で110万円)を超える贈与を受けた場合に適用されます。
この場合、個人Bが個人Aから株式を贈与された際の適正価格が30万円なので、贈与税の申告義務は発生しない可能性が高いです。
最終的に、個人Bは譲渡所得に対する所得税および住民税を計算し、適切な税額を納税する必要があります。この計算には、所得の種類、総所得金額、適用される税率、可能な控除や税額控除など、多くの要素が影響します。

非上場株式を親子間で譲渡するには課税関係に気をつけろ!

親子間で売買を行う場合に、最も注意すべき点は「適正価格で譲渡する」ということです。
親子間売買の場合、親はお金をかけずに子供に与えようという気持ちになることから、適正価格よりも低い金額で売却する傾向があります。
自社株の売買の場合、本来であれば、売却を行った側に譲渡所得税が課税されます。この譲渡所得税は、低い金額で売買を行っても問題はありません。
しかし、子が適正価格よりも低い価格で自社株式を購入した場合、時価と購入価格の差に贈与税が課税される可能性があります。
本来ならば、買取をした側には税金が課税される必要はありませんが、適正価格よりも低くした結果、贈与とみなされる可能性が生じてしまいます。

贈与税の税率早見表

基礎控除後の課税価格 一般税率 特例税率
税率 控除額 税率 控除額
〜200万円以下 10% 10%
200万円超〜300万円以下 15% 10万円 15% 10万円
300万円超〜400万円以下 20% 25万円 15% 10万円
400万円超〜600万円以下 30% 65万円 20% 30万円
600万円超〜1,000万円以下  40% 125万円 30% 90万円
1,000万円超〜1,500万円以下 45% 175万円 40% 190万円
1.500万円超〜3,000万円以下 50% 250万円 45% 295万円
3,000万円超〜4,500万円以下 55% 400万円 50% 415万円
4,500万円超〜 55% 400万円 55% 640万円

株式の譲渡に関わる税務上の取り扱いは複雑であり、実際の納税額を正確に算出するには、税法の専門知識が必要です。個人間の譲渡は、税務申告を行う際に税務専門家の助言を求めることが賢明でしょう。

 

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